下水処理水の流入や海水の遡上にともない複雑な水質挙動を示している淀川水系下流域において, 亜鉛の存在形態, 分布および挙動について解析した。全亜鉛の49~89%は溶存態であり, 溶存態比率は下水処理水放流量の多い第二寝屋川と平野川分水路でとりわけ高く, 80%を超えていた。一方, 溶存態に占めるフリーイオン態の比率は下水処理水放流域で小さかった。亜鉛負荷量は大川と寝屋川水域で概ね全量が2:3, 溶存態が1:2であり, 寝屋川水域の寄与が大きかった。汽水域の安治川では上流側の負荷量から推計される亜鉛負荷量の87% (全量) , 78% (溶存態) であり, 鉄負荷量とともに減少していた。汽水域ではpHの上昇にともなう溶存鉄の水酸化鉄共沈により, 溶存態亜鉛が凝集し, 水中負荷量が減少していたことが認められた。その一方で, 汽水域の底泥に蓄積される亜鉛の再溶解はほとんど認められなかった。