水質汚濁研究
Print ISSN : 0387-2025
広島湾における炭素, 窒素, リンの循環
伊達 悦二清木 徹井澤 博文星野 響
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1989 年 12 巻 9 号 p. 567-574,565

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抄録

1978年度から1983年度に行った調査から, 広島湾北部水域の富栄養化の状況を明らかにするとともに, 同水域の富栄養化機構の解明の一助とするため炭素, 窒素, リンの物質収支について検討を行った。
同水域の水質, 底質の有機汚濁は流入有機物量 (TOC) の約15倍に当たる270tC・d-1を生産する植物プランクトンによる一次生産に起因していることが判明した。一次生産への寄与率は流入負荷が窒素, リンでそれぞれ21, 17%, 水中内での有機物の分解・回帰に伴う循環が74, 75%, 底泥からの溶出が5, 8%と推定され, 一次生産は水中内での栄養塩の循環によって支配されていることが認められた。溶出量は流入負荷量の1/2~1/4であるが, 夏季には流入負荷量に匹敵する高い寄与率を示した。窒素, リンの回転時間はそれぞれ11, 7日, 滞留時間は50日で, これらが水域外に流出するまで, 数回繰り返して藻類の増殖に利用されることが推定された。

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© 社団法人日本水環境学会
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