抄録
水質の定期観測結果を用い,兵庫県内の河川・沿岸海域におけるMBAS濃度の過去15年間の変動を,統計解析した。
河川では,1mg・l-1以上の高濃度のMBASが1回以上出現した地点は58%に上り,出現頻度50%以上の地点も阪神地域を中心に21%あった。寒冷期(1~3月および10~12月)と温暖期(4~9月)との平均濃度に関する地点数ヒストグラムでは,分布の山は,経年的には低濃度側へ移動し,季節的には温暖期に低濃度側へ膨らむ傾向が見られた。
これを地点ごとに検討すると,7割以上の地点で経年的な減少傾向がみられ,その減少の程度はBODと比較して大きかった。また,6割の地点で寒冷期に高く温暖期に低い季節変動がみられた。これらの変動の要因として,各地での下水・工場排水処理の進展や河川微生物による生分解作用の水温依存性が推察された。
沿岸海域でも経年的には同様の減少傾向がみられたが,季節的には温暖期に高くなる逆の変動が認められた。