1991 年 14 巻 4 号 p. 253-260,232
湖沼底質からのリンの溶出機構を化学平衡や反応速度を用いた水質化学の観点から明らかにするため,提示した溶出モデルを模擬する室内実験を行い,モデルで示したFe(II)とリンの反応の複合過程が定量的に再現できるかどうか検討した。
(1)モデルの検証のため設定した室内実験は,リンの溶出に関与する物質をリン酸第一鉄と想定して,これをAir,N2通気下の塩酸溶液に溶解し,Fe2+,Fe3+,PO4-P濃度およびEhの変化過程を測定した。
(2)Fe(II)の酸化速度,水酸化第二鉄の溶解度積,水酸化第二鉄へのリンの吸着比を用いてFe2+,Fe3+,PO4-P濃度およびEhの予測値を求め実測値と比較したところ,両者はほぼ一致した。
(3)モデルで提示した複合過程が定量的に再現できたことから,嫌気,好気というDO条件によるリンの溶出速度を支配する主要因子はFe(II)の酸化速度と考えられた。