抄録
地下水中から検出されるcis-1, 2-ジクロロエチレン (cis-1, 2-DCE) の由来を明らかにするために, テトラクロロエチレン (PCE) の生分解について検討し, 次の知見を得た。
PCEに高濃度汚染された土壌にPCEの生分解が認められ, この土壌からPCEを分解する細菌 (T株と略) を分離した。
T株は周毛性のグラム陰性桿菌で, 嫌気性であり, 寒天平板培地上に集落形成をしない。T株の発育およびPCE分解性が認められたpH域はpH6.0~9.5で至適pHは7.2であった。また15~35℃の範囲でT株の発育およびPCE分解が認められた。
T株によるPCEの分解経路は脱塩素反応であると推定され, PCEからTCEを経て最終的にはcis-1, 2-DCEに分解された。T株は30mg・l-1のPCEを約60時間で90%以上分解する能力を持つことがわかった。