抄録
2つの都市ごみ廃棄物処分場の周辺土壌を対象に, 重金属濃度の調査を行った。調査対象とした処分場は焼却灰主体の埋立地であるA処分場と, A処分場に比べて焼却灰の搬入割合の小さいB処分場である。焼却灰は非常に多様な金属元素を含んでおり, 特に銅, 亜鉛, カルシウム, ナトリウムは, 一般的な非汚染土壌に比較して高い含有量を有している。各埋立地の周辺から採取した土壌試料を0.1N塩酸抽出法を用いて金属を抽出し, 原子吸光法によって分析した。その結果, A処分場の周辺より採取した土壌試料から, 焼却灰に多量に含まれる元素が高い濃度で検出された。高い濃度で検出された金属元素は同一地点で共通して検出され, 濃度が減少していく方向は, 処分場における卓越風向と一致していた。そのため, A処分場において焼却灰が飛散していた可能性が考えられた。特に高い濃度が検出されたのは処分場から30m以内であったが, 100m離れても, 以前としてやや高い濃度にあった。したがって, こうした濃度変化が焼却灰の飛散によってもたらされたとするならば, 飛散を抑制するための適切な埋立管理が必要である。