抄録
排ガス中のダイオキシン類の測定方法は, 操作の詳細な最適化が行われていないために, 極めて煩雑で多大な労力と高度な熟練を必要とし, 測定の負担がダイオキシン類対策の進展の阻害要因の一つになっている。
そこで, 本研究では, これらの問題点を改善するための一つとして, サンプリング方法の効率化を検討し, 従来の公定法と新しく提案した効率化法の各段階での捕集率を調べ, 十分に氷冷した200mLの水と300mLのジエチレングリコールを入れた2本の1L瓶のみで, PCDDs/PCDFsを完全に捕集できることを明らかにした。また, 4ヵ所の施設で合計10回, 著者らおよび3ヵ所の大手分析業者が, 開発された効率化法と公定法で同時に排ガスをサンプリングして測定値を比較したところ, 効率化法で公定法の測定値と同等またはそれ以上の値が得られ, 5本もの瓶やXAD樹脂を用いる必要はないことが確認された。この効率化法によって, サンプリングの準備や操作等が容易となり, サンプリング後の抽出, 濃縮操作も大幅に効率化され, 溶媒使用量も数分の一に削減できた。
この方法を用いれば, 分析業者だけでなく, 発生事業者が自ら排ガスをサンプリングし, 抽出までを行うことも容易になり, 抽出液の分析のみを分析業者に依頼することで, 測定経費を大幅に削減できると考えられる。