抄録
筆者らは有害化学物質による埋立地のリスクを軽減することを目的として, バイオアッセイ, 特に変異原性試験による有害性の評価に注目し, 埋立廃棄物および浸出水の変異原性の調査を行っている。これまでに, 埋立地浸出水を用いて最適な変異原物質の濃縮・変異原性試験の方法について検討した。また, 実埋立地浸出水の調査を通して, 浸出水の生物的酸化処理によって変異原物質が生成されることを明らかにした。
そこで本研究では, 埋立模型槽を用いて廃棄物の種類および埋立条件と変異原性の関係を調査し, 浸出水中に主に検出されるフレームシフト型の直接変異原物質の生成機構とその要因について検討した。さらに, この結果を基に, 変異原物質の生成実験を行い, 生成機構の検証を行った。
その結果, (1) 好気的な埋立構造ほど変異原性の出現が早いこと, (2) 焼却灰と窒素化合物を含む廃棄物を埋め立てた場合, 生物的硝化過程および硝酸塩の化学的還元過程におけるNO-2およびN2Oの生成初期に変異原物質が生成されること, (3) 硝酸塩の還元過程において検出される変異原物質に多環芳香族炭化水素のニトロ誘導体や芳香族アミンが含まれていること等が明らかになった。