抄録
リサイクルの目的は実施する主体によって多様であるが, リサイクル事業の継続性はその経済性が確保されなければ保証されない。資源としての都市廃棄物の潜在的大きさと現実のリサイクル量との乖離は大きい。本文では, 廃棄物が市場でリサイクルされる条件を明らかにしたうえで, 公共部門がリサイクル事業を実施するという意思決定の経済的背景を社会的費用便益分析の枠組みで解説する。リサイクル事業の経済性は, 埋立処分場による自然破壊等環境損失を費用としてどの程度内部化しているか, またリサイクルの社会的便益として何をどの程度計上しているかに大きく依存している。公共部門のリサイクルが経済性を獲得できないもう1つの原因は, リサイクルが廃棄物処理の代替手段としての側面と, 処女資源との市場での競争に規定されるという側面との二面的性格をもっていることにある。最後に市民主体によるリサイクル運動の直接的効果と循環型社会システム形成に果たす役割に言及する。