抄録
本論文は, 新規な下水汚泥の処理技術として触媒湿式酸化法の適用性について検討したものである。研究結果の概要は以下の通りである。 (1) 焼却処理等での脱水, 乾燥工程を必要とせず, 濃縮汚泥を直接液相下で処理できる。 (2) 280℃, 9.12MPa, 1.5時間での反応条件により, 汚泥中の有機物, 窒素化合物をほぼ完全に処理できる。 (3) 汚泥は可溶化後低分子化され, カルボン酸類やアルデヒド類を経由して炭酸ガス, 水となる。 (4) 反応初期pH, 送入空気比の変化による有機物, 窒素化合物の処理性に及ぼす影響は小さい。 (5) 汚泥種の違いによる各成分の処理性に大きな差は認められない。 (6) 熱収支試算結果より, 汚泥中の有機物, 窒素化合物の分解による反応熱の約70%程度をエネルギー回収できる見通しを得た。 (7) 汚泥処理の課題としては, 長期連続実験に基く, 金属酸化物の反応系内への一部沈積に対する薬剤洗浄頻度の確認と, 触媒の耐久性評価が必要と考えられる。