抄録
都市ごみ焼却施設において, 乾電池の水銀含有量の低減化と塩化水素 (HCl) と二酸化硫黄 (SO2) の処理技術等が水銀の排出におよぼす影響を明らかにし, 東京23区および日本全国における都市ごみ焼却施設から排ガスとして大気中に排出される水銀量等を考察した。
HClとSO2の処理技術として電気集じん装置 (EP) と組み合わせた粉体噴射法を採用している都市ごみ焼却施設において, 乾電池の水銀含有量の低減化によって, 水銀排出濃度が約0.25mg/m3Nから約0.08mg/m3Nへ低下したこと, 高い水銀排出濃度の出現回数が激減したことが確認された。
HClとSO2の処理技術によって水銀が除去され, その除去率はEPと組み合わせた粉体噴射法では約35%, 湿式法では約65%, キレート剤を吸収液に添加した湿式法では約90%, フィルタ法では約75%であった。
東京23区では, 1986年から1996年の間に焼却ごみ量は約1.27倍に増加したが, 乾電池の水銀含有量の低減化と排ガス処理技術の採用によって, 水銀の排出量は約1/6に減少した。また, 1992年の日本全国における都市ごみ焼却に伴う大気環境への水銀の排出量は約17t/yと推算され, 排ガス処理技術による水銀の排出削減量は約9t/yと推算された。