抄録
最終処分場の環境下でセメント固化体からの重金属の溶解を明らかにするために, 塩化カドミウムと塩化鉛を含むセメント固化体 (粒径0.5~1mm) について, 蒸留水あるいは酢酸を用いて反復溶出試験を行った。また, 溶出試験の途中で固化体を空気あるいは炭酸ガス (炭酸ガス/空気=1) に暴露させた。その結果, カドミウムの溶解挙動は水酸化物沈殿平衡, 炭酸塩沈殿平衡によって定量的に説明できた。低pH水と接触した場合, カドミウムは全量溶解した。炭酸ガス濃度が高くpHが中性程度であれば溶解濃度は低かった。鉛の溶解挙動は水酸化物沈殿平衡, 炭酸塩沈殿平衡によって説明できなかった。低pH水と接触した場合, 鉛は長期間にわたって1mg/L以上の濃度で溶解した。高炭酸ガスと接触した場合, 鉛は炭酸塩を生成し, 不溶化することがわかった。ただし, この場合も, 低pH水と接触すると, 鉛は長期間にわたって溶解した。この結果から, 重金属溶出防止のためには, 埋立物の上層にセメント固化体を埋め立てることが有効であると考える。