抄録
土壌中のテトラクロロエチレン (PCE) の嫌気的脱塩素化処理を目的として, 汚染土壌を詰めたカラムを用いて実験した。脱塩素化菌群の集積培養液を植種源として, また豆腐製造廃液を電子供与体として用い, 29ヵ月間, 汚染土壌を浸漬したところ, 土壌中のPCEの約35%および間隙水中の88%以上がジクロロエチレン (DCE) まで脱塩素された。しかし, エチレンまでの完全脱塩素化は進行しなかった。一方, 汚染土壌の上部に電子供与体となるウッドチップを詰めて, 下部から溶出液を採取する半連続カラム実験を行ったところ, 25日後の溶出液中には, DCEだけが検出された。それとともに, DCEの溶出量が増加し, 計算では, 汚染土壌中のPCEの完全溶出年数は11.7年から4.5年に減少した。このカラム実験でも, 完全脱塩素化は困難であったことから, カラム溶出液中のDCEの好気的分解を検討した。その結果, トルエンまたはフェノールを添加した場合にDCEの分解が認められた。また, 遺伝子組換え菌の静止菌体の利用が特に有効であった。