抄録
本研究では、牛ふん尿に起因する河川と地下水汚染を推測するための流域内窒素収支モデルを構築する。そのために、対象領域内の土地利用(牧草地と牧場敷地)に応じた実際の窒素負荷量を推定するために現地調査及びヒアリング調査を行った。これら調査結果に基づき、対象流域をメッシュに分け、各メッシュ毎の水と窒素収支バランスを考慮し、3ヶ月平均と河川と地下水の全窒素濃度を推測した。以上の結果、(1)堆肥の野積みは、地下水窒素汚染に非常に大きな影響を及ぼすこと、(2)ふん尿の草地への大量還元(例えば25t/10a)により、地下水中全窒素濃度が上昇すること、その傾向は、特に春先の雪解け時顕著に見られることが明らかとなった。本モデルは、地下水中窒素濃度低減のための流域内の適正な家畜ふん尿の管理方策を検討するためのツールとなりうることを示した。