抄録
稲刈り後に春まで乾燥状態に置かれる慣行水管理の水田と稲刈り後から春まで田面に水を張る冬期湛水の水田において、田んぼ生態系の底辺を担う原生生物および藍藻類の出現種数を比較した。その結果、確認全種数は冬期湛水(391種)および慣行水管理(378種)と両者の差は小さかった。しかしながら、各調査毎の出現種数は、冬期湛水(平均109種)において慣行水管理(平均68種)よりも有意に高いことが確認され、冬期湛水において原生生物および藍藻類の種多様度が高いことが明らかとなった。同様に田面水中の原生生物および藍藻類の現存量を比較した。その結果、両者ともに湛水期間を通じて田面水中の細胞数は1mlあたり1,000から100,000細胞の範囲で増減を繰り返すことは共通であることが明らかとなった。しかしながら、湛水期間における単位田面水あたりの細胞数を比較すると、冬期湛水水田では1mlあたり36,700細胞、慣行水管理水田では1mlあたり13,800細胞と約2.7倍の差違が認められた。5月期における水田水尻からの流出水に、含まれる原生生物および藍藻類現存量を比較すると冬期湛水水田では平均1mlあたり49,000細胞、慣行水管理水田では平均1mlあたり18,000細胞であり、慣行水管理水田に比較して冬期湛水水田からの流出水に極めて高密度の原生生物類および藍藻類が含まれることが明らかとなった。冬期湛水水田に認められる原生生物および藍藻類の種多様性および現存量の高さは、水田に遡上するドジョウなど小型魚類へと食物網を通じて高次捕食者全体に波及していくことが示唆された。