日本水処理生物学会誌
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報文
  • 柿木 明紘, 山崎 宏史, 西村 修
    原稿種別: 報文
    2025 年 61 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/15
    ジャーナル フリー

     小型浄化槽の消毒においては、維持管理における保守点検の都合上、装置が簡便で残留塩素により長期間効果が持続する塩素消毒が用いられている。しかし、維持管理効率化の観点から、今後、新機軸の消毒方法を検討する必要がある。近年、紫外線を照射可能なLEDが開発されたことにより、中規模以上の汚水処理装置でしか適用事例がなかった紫外線消毒を一般戸建住宅用の小型浄化槽で導入できる可能性が高まってきた。しかし、小型浄化槽では、各家庭におけるライフスタイルの影響を受けて、水質・水量が時間変動しやすいため、それらが紫外線照射効果に影響を及ぼすと予想されるものの、これまでに調査事例は無かった。本研究では、小型の実使用浄化槽にLED近紫外線照射ユニットを装着し、その消毒効果に水質・水量が与える影響を検証した。この結果、高度処理型浄化槽(処理目標水質 BOD: 10mg・L-1以下、SS: 10mg・L-1以下)であれば、紫外線消毒により大腸菌群および大腸菌とも十分な不活化効果が得られることが示された。ただし、流量の変動に伴う紫外線照射時間の変化が消毒効果に影響を及ぼすことが確認されたため、紫外線消毒装置による消毒効果を維持するためにはより安定した流量調整機能を発揮する装置を併用することが有用であると考えられた。

  • 三輪 耀大, 森 一博, 西田 継, 遠山 忠
    原稿種別: 報文
    2025 年 61 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/15
    ジャーナル フリー

     タイダルフロー人工湿地(TFCWs)は、人工湿地内が排水で満たされた満水と排水を全て排出した後の干水を交互に繰り返すようにコントロールされた人工湿地であり、高い窒素除去性能を有することが知られている。しかしながら、実下水を処理するパイロットスケールのTFCWsにおいて、窒素除去の性能や機構を詳細に調べた研究例はない。そこで本研究は、下水処理場にヨシを植栽したパイロットスケールTFCWを設置し、6時間満水/2時間干水のサイクルで実下水を流入して下水を処理する実証試験を11か月間行い、その期間のTFCWの窒素除去性能と機構を調べた。その結果、干水時に人工湿地基盤材に蓄えられた酸素が満水時に流入下水に供給されて下水が好気的環境になるとともに、下水中の有機物が除去されること、また、流入下水が好気的環境から嫌気的環境に変化する様子が観察された。さらに、満水時に硝化と脱窒によって下水中の窒素が効率的に除去されることが示唆された。このような特性のパイロットスケールTFCWの単位面積当たりの窒素除去性能は37.9g-全無機窒素/m2/日であり、これはこれまでに報告されている他の流入方式の人工湿地の窒素除去性能よりも高い値であった。さらに、下水処理の実証試験を行った11か月間においてTFCWの窒素マスバランス分析を行ったところ、TFCWに流入した窒素26.11kgの82.97%が微生物による硝化・脱窒、0.98%がヨシによる固定、0.05%が基盤材への吸着によって下水中から除去され、15.99%が放流水として系外へ流出したことが示された。この結果から、このパイロットスケールTFCWによる主な窒素除去の機構は、微生物による硝化・脱窒であることが示唆された。

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