日本水処理生物学会誌
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下水の流入する溜池を曝気した場合の生物相の研究
1967年三ツ池の場合
友清 祚予子黒坂 たき
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1968 年 4 巻 1 号 p. 33-39

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抄録
1) 大阪府立水産試験場寝屋川淡水魚試験場では, 付近の住宅街から下水が多量に流入する溜池に, 強力な曝気を施して, プランクトンの生産を高め, プランクトンフィーダーの魚種の収穫量を高めることを目的とした実験が計画された。わたしたちは淡水魚試験場からの依頼を受けて, プランクトン・底生動物について調査した。本研究は昭和42年4月から11月まで, 約1ケ月ごとに調査した試料に基づいた。
2) 水温・pH・溶存酸素の垂直分布は, 曝気によって全層の差が少ない。しかし8月における溶存酸素は, 他の月よりも各層においてやや差があるので, 富栄養湖としての夏期停滞期における酸素の成層は曝気によって完全にくずされるまでには至っていない。植物性プランクトンが非常に多い春と秋における表層の酸素飽和度は, 100%程度で, 著しい過飽和現象は見られなかった。これは池の水が曝気によって常に攪乱されているからである。
3) プランクトンは昨年は強腐水性水域の指標種である.Euglenaが優勢であった。今年は4月から再び曝気を施すことによって, 昨年よりも下水が多量に流入し, また曝気の能力がやや落ちているにもかかわらず, 植物性プランクトンを多量に発生させることができた。そのフローラはEuglenaより汚濁の程度が低い水域に出てくる緑藻類とくにScenedesmus属のものや, 珪藻のCyclotella, 藍藻のChroococcusが多い。よってこの池はWeimannの分類の類型でいえば, セネデスムス型に属せしめるか, または, 何らかそれに近い型を作ってそれに属せしめねばならない。ともかく金魚池や養鯉池の状態に近いと判定する。
4) 底生動物においては4月から7月までは出現量はゼロまたは少量である。8月以降は若干多く出現しはじめた。8月以降出現したTubifexにしても, Tendipesあるいはタニシにしても酸素欠乏にかなり強い種であって, これ以外の底生動物の認められぬことは, 水中の環境条件が充分に良好というわけにはいっていないことを推察させる。しかし曝気によって底生動物の生息圏は多少とも拡大していることは考えられる。
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