紙パ技協誌
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研究報文
脱墨工程の界面化学
―雑誌古紙の発泡性に関する脱墨剤と脂肪酸の効果―
後藤 至誠宮西 孝則
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2004 年 58 巻 2 号 p. 238-247

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抄録

雑誌古紙の配合の増加に伴う泡トラブルの対策の一環として,古紙および脱墨剤の発泡性について,脱墨剤の動的表面張力と泡立ちの関係および脂肪酸添加効果について調べた。
雑誌古紙を新聞古紙に50%配合することにより,フローテーションでのフロス液量が1.5倍に増加した。処理前のパルプを分析した結果,灰分および濁度が増加し,ゼータ電位がより小さくなり,カチオン要求量および表面張力が低下していた。系内に泡に吸着されやすく泡沫を安定させる灰分が増加すること,疎水性の溶存物質が増加することから,雑誌古紙配合パルプは泡立ちやすく泡切れにくいことが判った。これらの結果から,雑誌古紙には,従来よりも泡立ちの低い脱墨剤が効果的と考えられた。
脱墨剤水溶液の動的表面張力を測定し発泡性との関係を調べた結果,初期動的表面張力の高い脱墨剤ほど発泡性が低いことが判った。初期動的表面張力の高い脱墨剤は,複数の成分からなる混合物であり脂肪酸を含んでいた。脂肪酸の添加により,脱墨剤水溶液の動的表面張力が高くなり泡立ち難くなることが明らかとなった。ステアリン酸/パルミチン酸混合物とオレイン酸は,共に動的表面張力の上昇効果があるものの,表面粘弾性については異なる挙動を示していた。ステアリン酸/パルミチン酸混合物を添加した系では,時間の経過と共に表面粘弾性が変化したが,オレイン酸を添加した系では変化が無かった。従って,融点の高い固体状のステアリン酸/パルミチン酸混合物と融点の低い液状のオレイン酸では,異なる作用機構が働いていると推測された。
動的表面張力を指標として適切な脱墨剤を選定することで,雑誌古紙の発泡性を低減でき,高い白色度の高品質DIPを得ることができると考えられた。

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© 2004 紙パルプ技術協会
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