紙パ技協誌
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研究報文
加圧脱水方式の保水性測定に及ぼす濾過膜細孔径の影響と塗工実操業および印刷品質との相関性
柴 裕一
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2006 年 60 巻 6 号 p. 919-929

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抄録

各種の塗工方式における塗工液の脱水挙動をラボレベルで完全に再現することは容易で無いが,比較的良く相関するデーターが取れる方法としてAA―GWRに代表される加圧脱水方式が広く定着している。これまで非常に一般的であったカオリンと澱粉を使用する塗工液の場合,5.0μm細孔径のフィルターが利用されてきた。しかし,顔料の微粒化,各種材料のノニオン化などの新たな要因により,ある特定の塗工液中の粒子はフィルターを透過して吸水紙へ到達してしまう為,保水性を示すはずの脱水量が異常に大きい値を示す例が見受けられるようになった。そこで,本研究では,これまで一般的に使用されてこなかった塗工液成分にも対応できるフィルターの細孔径の検討行うために,5.0から0.05μmの細孔径を有するフィルターを使用した実験を行った。また,塗工工程での塗工液の保水性の影響を調べる為に,実機レベルに近い高速パイロットブレードコーターを使用した。
その結果,PVAやHESなどイオン性官能基を持たない水溶性バインダーを使用した場合や,比較的微細な炭酸カルシウムや酸化チタンを使用する場合に,ブレード塗工機での操業性や塗工紙品質の実態と相関しない,異常値とも言える非常に大きな値を示すことがわかった。しかし,0.4μm細孔径のフィルターを用いた場合は,このような特定の塗工液でもより正確な予測や考察が可能であることがわかった。5.0μmと0.4μmのような複数の細孔径のフィルターを併用することで,これまで蓄積されてきた保水性の検討結果を生かしながら,様々な塗工液,塗工方法,塗工用原紙(基材)へ対応してその操業性や品質の予測や考察が可能となるであろう。

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© 2006 紙パルプ技術協会
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