紙パ技協誌
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研究報文
画像特徴量の組み合わせ最適化による紙の自動分類
石川 卓矢田 紀子長尾 智晴
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2011 年 65 巻 6 号 p. 585-594

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抄録

紙幣や諸証券等のセキュリティ印刷物において,偽造品との差別化は重要な課題である。しかしながら,セキュリティ印刷物に新たな特徴的な要素を追加することは,コストの増加に繋がるため容易ではない。そこで,印刷物の基材となる「紙」がもつ情報を利用する分類手法に注目した。材料や製造条件等が異なることによって生まれる紙の特徴の違いを利用することが紙の分類において有効であると考えられる。
現在までに,紙の分類方法として,紙の画像に現れる周期的な特徴の違いに注目した手法が提案され,その有効性が示されているが,より多様な紙の特徴の変化にも対応した分類方法として,紙の画像から算出可能な複数種類の特徴量を組み合せる方法が有効と考えられる。
本報では,遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm:GA)とサポートベクターマシン(Support Vector Machine:SVM)を組合せた分類器作成手法である特徴量選択型SVMを用いて,撮像された紙の画像から算出可能な複数種類の特徴量を基に学習を行い,材料や製造条件等が異なる紙の分類を行う分類器を自動的に構成する方法を提案する。分類器の構成に用いる画像特徴量は,階調値を用いた特徴量,2値画像から得られる特徴量,分割した画像から得られる特徴量及びGray Level Co―occurrence Matrix(GLCM)から得られる特徴量を用いた。提案手法の能力を確認するために,メーカーの異なる紙及び作製条件の異なる手すきシートを用いて分類器を構成する実験を行った。その結果,材料や制作方法の違い等,様々な条件が異なる紙に対応した高精度な分類器を自動的に構成することができ,提案手法の汎化性と有効性を確認することができた。

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© 2011 紙パルプ技術協会
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