製紙工場での排水負荷の低減において活性汚泥処理は主要な排水処理技術である。多くの製紙工場で活性汚泥設備が利用されているが,各工場の活性汚泥が各工場の排水に対して最適であるかどうかは分からなかった。そこで,4工場の活性汚泥とその工場の原排水の組み合わせで分解試験を行った。その結果,原排水を分解するのに必ずしも自工場の活性汚泥が最適とは限らなかった。
各工場の活性汚泥で分解性能に差があることが確認できたので,次に高性能汚泥を他工場で利用する検討を行った。高性能汚泥を他工場汚泥に配合することで分解性能は向上し,その効果は長期間(35日間)維持された。
活性汚泥の分解性能と細菌の関係についての知見が少なかったので,分解性能の異なる9工場の活性汚泥中の細菌優占種について遺伝子解析(PCR―DGGE解析及びシークエンス解析)を行った。その結果,分解性能の高い汚泥にはβ―プロテオバクテリア綱ロドサイクルス目に属する細菌が優占種として確認された。ロドサイクルス目に属する細菌が活性汚泥の分解性能に寄与する有用細菌であると考えられた。
また遺伝子解析より,高性能汚泥を他工場汚泥に配合して利用した場合,高性能汚泥由来の細菌は生存し,生存していた細菌の中に有用細菌と考えられるロドサイクルス目が確認された。
以上より,高性能汚泥を利用して工場の排水処理効率を向上させることは可能であると考えられた。