抄録
王子マテリア江戸川工場は東京都東端に位置し,首都圏から発生する大量の古紙を集荷し易く,製品の消費地に近いという恵まれた立地条件を生かし,地域社会との共存共栄をテーマに白板紙を生産している都内唯一の製紙工場である。当工場5号抄紙機は1971年5月に白板紙専抄マシンとして操業を開始し,現在では,年間約13万トンの白板紙を生産しており,製品は主に紙器用途に使用されている。
そこで,5号抄紙機ドライヤーフードは,稼動後39年が経過し各所に劣化が進行しており,既存のオープンフード,給排気設備には下記の問題があった。
(1)オープンフードのため蒸気及び給気エアの噴き出しが発生しエネルギーロスとなっていた。
(2)フード排熱利用が不十分で,一般的な密閉フードと比較して乾燥効率で劣っていた。
(3)フードパネルの断熱性とシール性に劣るため,蒸気噴き出し等で抄紙室内環境を悪化させていた。
今回,省エネ,老朽化対策,作業環境改善を目的として,ドライヤーフード及び給排気設備の更新を実施し,ドライヤーパートにおける省蒸気,省電力を達成できた。更に,オペレーターの作業環境改善という観点からもフードの密閉化及び給排気風量の適正化は有効な手段であると考える。
本報ではドライヤーフード改造として採用した「高露点型密閉フード」及び,排熱回収装置として,給気を加温し,更に温水製造を行うことで排熱の有効利用を可能とした「エコノマイザー」を中心に,概要及び更新による省エネルギー効果について報告する。