紙パ技協誌
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研究報文
竹のソーダアントラキノン蒸解黒液からのヘミセルロース回収
真柄 謙吾下川 知子池田 努
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2015 年 69 巻 3 号 p. 308-313

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抄録

竹のバイオマス蓄積量は,16,000,000トンと概算されているにも関わらず,原料としてはほとんど利用されていない。それが,特に西日本で竹の繁茂と周りの植生への浸食の原因となっているので,竹の商業的,工業的用途の開発は,竹林の手入れを改善するかもしれない。これまで,竹を原料に竹酢液,家畜の敷料および堆肥などが製造されてきたが,これらの用途は限定的であった。
最近,ある製紙工場で竹紙が製造されるようになった。製紙原料としての竹の需要は,おそらく竹林の手入れを改善する大きな力の一つになるだろう。
しかし,竹のアルカリ蒸解には,含まれるデンプンが失われることにより収率が低いという欠点がある。更なる用途開発のためには,リグニンやアルカリの損失無しに黒液からヘミセルロースを回収すべきであろう。
本稿では,タケに多量に含まれるヘミセルロースの利用法を開発するために,タケのソーダアントラキノン蒸解法とその黒液中で沈殿するヘミセルロースの回収を検討した。
タケの蒸解効率は,熱水による前抽出により改善された。これは,蒸解中に活性アルカリを消費するデンプンが除かれたためと考える。蒸解後,高分子量のヘミセルロースが黒液中で沈殿する。デカンテーションで回収し洗浄した沈殿ヘミセルロースの収量は,300gの乾燥タケチップから6.5gであった。また,黒液のpHを11.5に調整することにより,その量は増加した。

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© 2015 紙パルプ技術協会
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