紙パ技協誌
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省エネルギー特集 I
触媒を用いた水熱ガス化処理による有機廃水からの燃料ガスの創出
松本 信行
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2017 年 71 巻 6 号 p. 598-604

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抄録

地球温暖化の抑制の観点から,温室効果ガス排出削減が必要であり,廃棄物・廃水処理分野でも,エネルギー消費が少ない処理技術やこれまで利用されていなかった廃棄物や廃水の持つエネルギーを利用可能な形で取り出す新技術が求められている。工場で発生する廃水の処理法として最も普及しているのは活性汚泥法に代表される生物処理であるが,生物処理法で処理が困難な廃水は,重油などの燃料を用い,焼却処理する方法が採用されるのが一般的である。焼却処理は,安定した性能が得られる処理法であるが,燃料を大量に使用するためCO2を多く排出し,処理コストも高くなるという課題がある。

当社は,生物処理ができないために焼却処理されている廃水に適用する新たな処理法として,水熱ガス化プロセスの開発,商用化を行った。このプロセスでは,独自に開発した触媒に高温・高圧にした廃水を通過させることにより廃水中の有機物を高速で分解処理するとともに,その処理過程でメタンを主成分とする可燃性ガスを創出することができ,廃水処理,エネルギー回収,CO2排出量削減を同時に実現することが可能となる。

当社は,触媒の開発を行うとともに,ラボスケールおよびベンチスケールでの実験により,各種有機物の分解特性を確認し,基本プロセスの開発を行った。引き続いて,月島環境エンジニアリング株式会社と共同で,実機としても使用可能な規模のパイロットプラントを設計・製作し,実廃水が排出される工場に設置して約8,000時間の処理運転を行い,プロセスの有効性を実証した。パイロットプラントは,試験終了後も実機として継続して稼動し,運転時間は33,000時間を超えている。

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