紙パ技協誌
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研究報文
経年劣化紙資料の加速劣化試験(第3報)
経年劣化紙資料の加速劣化試験(第―チューブ法(80℃)による紙の劣化挙動―
李 壃稲葉 政満
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キーワード: S1紙の性質, Y0その他
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2017 年 71 巻 9 号 p. 1025-1032

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抄録

筆者らは130年から80年間経年劣化した紙資料を用いて紙の経年劣化と加速劣化の関係を明らかにするための研究を行っている。懸垂法(80℃,65%rh)で湿熱劣化させ,紙試料の劣化挙動を検討した第1報に続き,本研究では懸垂法と同一試料を用いてチューブ法(80℃,密封条件)における紙の物理的,化学的な劣化挙動を明らかにした。JCS試料の物理強度の劣化指標として,チューブ法においてもその劣化速度定数よりも,劣化速度定数を加速劣化前の現在の物性値で除した劣化速度指標を求めるのが良いことがわかった。

加速劣化した時の紙の比引裂強さ,比破裂強さの劣化速度指標及び変色速度定数において,その値は懸垂法よりも高いが,それぞれの方法内での変化傾向は類似している。そして,懸垂法での結果と同様に経年劣化の状態を示す有機酸が多く蓄積されている紙試料ほど,チューブ法における比引裂強さ,比破裂強さの劣化速度指標及び変色速度定数も大きくなった。よって,これらの劣化指標はセルロースの切断数とよく相関しており,紙の諸物性の低下にはセルロースの切断が大きく寄与している。また,セルロースの切断には酸の種類は関係なく,紙の酸加水分解反応とともに酸化反応も同時に寄与している。

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© 2017 紙パルプ技術協会
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