2018 年 72 巻 1 号 p. 70-73
セルロースナノファイバー(CNF)は,複合材,機能材,増粘剤として優れた物性を示しているが,断熱材やフィルタといった多孔質材料としても期待が高まっている。そこで,CNFをエアフィルタ濾材へ適用すると,通気抵抗(圧力損失)をあまり上げずにより多くの微粒子を捕捉でき,優れたフィルタとなることが分かった。そのフィルタ性能は従来のガラス繊維から成るエアフィルタ濾材よりも高く,さらに,微細なネットワーク構造から,数nmオーダーの超微粒子の捕捉も期待される。
CNF含有エアフィルタ濾材は,支持体である既存のガラス繊維不織布にCNF分散液を付着させ,凍結乾燥させることにより得られた。支持体となるガラス繊維の間に,クモの巣状のCNFネットワークが形成され,効率よく微粒子を吸着させていると考えられる。支持体に対するCNFの付着量は,フィルタ性能に対して最適値があり,CNF付着量が多いとガラス繊維間でCNFが密になり,やや性能低下となった。CNF含有エアフィルタ濾材は,湿度の影響を多少受けるものの,風圧や微粒子を連続負荷させてもCNFの脱落は確認されず,CNFネットワークが強靭であることも示された。まだ課題も残されているが,多量に存在するバイオマスを極少量使用するだけで大幅なフィルタ性能の改善が得られることは非常に興味深い。