2018 年 72 巻 7 号 p. 754-759
例えば,紙・板紙の消費量を年次に対して対数でグラフ化すると,その年の勾配がその年の変化率となる。1950年からの紙・板紙の消費量の変化を調べると,1970-1975年を境に年当たり増加率が13.2%から3.8%に激減,さらに1995-2000年からマイナス0.9%となっている。これらの時期に,日本のGDP(名目)の年当たり変化率も14.5%増から8.6%増,さらに0.0%と変化しており,社会・経済がこれらの二つの時期に大きく変わったと理解され,製紙産業の生産活動もそれに大きく影響されたことになる。
製紙産業の日本経済の中での立ち位置は,1960年で製造業の約3%を占め,以後漸減気味であるが,その位置を保っている。これは,浮き沈みの激しい他産業に比して特異的である。また,長年にわたって,輸入,輸出ともに10%以下で,輸出をしない代わりに,輸入紙圧力に対し内需を保ち続けたことになる。
日本の社会・経済が先の二つの時期に大きく変化する中で,製紙産業がその地位を保ち続けることができたことには技術的な対応が寄与したと考える。その歴史を次号から追いかけてみる。