紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
研究発表会/板紙・段ボール特集
ブラジル北部におけるユーカリ植林地での育種状況
林 和典岩田 英治根岸 直希
著者情報
ジャーナル 認証あり

2019 年 73 巻 11 号 p. 1076-1079

詳細
抄録

当社は持続可能な原材料調達の一環として「Tree Farm構想」を掲げ,ブラジル,チリ,オーストラリア,南アフリカにおいて海外植林地を管理している。このうち,ブラジル北部アマパ州では,当社最大の植林面積を持つプロジェクトを展開中であり(Amapa Florestal e Celulose S.A.(AMCEL)),ユーカリ植林とチップの生産を行っている。

AMCEL社は,平坦でまとまった面積を持つ植林地,植林地からチップ工場及び積出港までの距離,海外への輸出に適した地理的立地等,高い潜在力を持ちながら,かつては植林木の成長性は低迷し,本来の好条件を活かしきれていなかった。そこで,2006年の買収以降,これまで当社が検討を行ってきた木材分析技術や選抜育種技術の実践的開発を進めるべく,熱帯地域に適したユーカリ樹種の導入,近赤外分光分析による木材分析法の確立,クローン選抜工程の改良等の施策を現地で積極的に推進してきた。その結果,植林木の成長性,容積重,パルプ収率は着実に上昇を続け,特に昨年,現行の主力クローンを大きく超える新事業用クローンを開発するに至った。このクローンは本年から事業規模での検証を開始している。

本稿では,継続的に実施しているAMCEL社のユーカリ育種の現況とともに,近年,植林分野でも急速に普及しつつあるゲノミックセレクション(DNAマーカーを用いて有用形質を持つ個体を選抜する最新の育種手法)への取組みを含め,今後の展望について報告する。

著者関連情報
© 2019 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top