紙パ技協誌
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研究報文
叩解処理したTEMPO酸化パルプの特性解析(第2報)
小林 由典野一色 泰友山本 学齋藤 継之磯貝 明
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2019 年 73 巻 12 号 p. 1229-1233

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抄録

広葉樹クラフトパルプにTEMPO触媒酸化を施し,アルデヒド基量がほぼ同量でカルボキシ基量の異なる2種類のTEMPO触媒酸化パルプ(TOP)を調製した。TEMPO触媒酸化はTEMPO/NaBr/NaClOシステムで行った。元のパルプと2種類のTOPをPFIミルを用いて叩解処理を行い,叩解処理がTOPから作製したシートの基本特性に与える影響を検討した。同一のPFIミル回転数で処理したパルプから作製したシートの引張り強度を比較すると,TOPから作製したシートは元のパルプから作製したシートよりも高い引張り強度を発現した。また,元のパルプは叩解処理を施してもシートの湿潤引張り強度はほとんど向上しなかったが,TOPでは顕著に向上した。叩解処理に伴いTOPではパルプ表面のアルデヒド基量が増加しており,このパルプ表面のアルデヒド基量と湿潤引張り強度には明確な関係性があった。この結果から,繊維間における水酸基とアルデヒド基によるヘミアセタール結合の形成が湿潤強度の発現性に関係している可能性が示された。また,本検討からTOPを抄紙工程で使う場合に叩解処理は湿潤引張り強度を発現させることのできる効果的な方法であることが示された。

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© 2019 紙パルプ技術協会
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