紙パ技協誌
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総説・資料
ベトナム紙パルプ産業とオゾン漂白
─海外出張報告─
宮西 孝則
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2019 年 73 巻 5 号 p. 447-452

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抄録

東南アジアではシンガポールを除いて排水処理対策が急務であり,特に製紙工場からの濃い着色排水の対策が求められている。ベトナムにおいても,排水処理だけでなくパルプ漂白も含めて環境対策としてオゾン処理を検討する必要があることから,ベトナム紙パルプ協会(Vietnam Pulp and Paper Association,略してVPPA)の要請により2019年3月5日にハノイ市にてパルプのオゾン漂白について講演を行った。講演会には,フートー工業貿易大学製紙技術学部とハノイ科学技術大学製紙学部の講師と学生,紙パルプ製造会社30社以上が参加し盛況であった。

最初にベトナム紙パルプ協会Son理事長の開会挨拶があった。「ベトナムの製紙産業は年間約15〜17%の成長率を示しており,この分野で大規模な投資が計画されている。製紙関係プロジェクトの生産能力は,それぞれ40〜50万トン/年であり,一部の企業は,100万トン/年を超える包装紙の投資計画を準備している。パルプ分野では13万トン/年のプロジェクトがあり,50万トン/年の設備投資を検討中の企業もある。現在,ベトナムのパルプ工場は依然として古い漂白技術を使用している。パルプ白色度と紙の強度を改善し,化学薬品費を最少化し,環境保護を確実にするために,新技術を採用することが紙パルプ工場の目標となっている」と述べた。

続いて筆者が「オゾン漂白の基礎と実例」と題する講演を行った。質疑が多く会場は大変に盛り上がり,非常に良いセミナーになった。「日本がオゾン漂白を導入した理由」,「二酸化塩素ECF漂白に対するオゾンECF漂白のメリット」,「設備投資金額と漂白コスト」,「オゾン発生装置のメンテナンス」,「パルプ強度,粘度,白色度,色戻り」,「排水のCOD,BOD,色度,有機塩素化合物濃度」,「オゾン漂白を導入した工場の樹種とパルプ化法」,「中濃度と高濃度オゾン漂白の特徴」,「将来TCF漂白に移行する可能性」など,核心をついた質問が次々に寄せられ,講演終了後,質疑応答だけで更に1時間を要した。紙パルプ製造業はベトナムの重要産業と位置づけられ,大規模プロジェクトを抱え熱意が伝わって来る。講演が今後のベトナムの経済発展に些かでも貢献できれば幸いである。

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© 2019 紙パルプ技術協会
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