紙パ技協誌
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CNF特集
ザンテート化セルロースナノファイバーの開発
田嶋 宏邦
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2020 年 74 巻 2 号 p. 108-112

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抄録

パルプを化学的あるいは機械的処理により,幅がナノメートルオーダーまで解繊することによりセルロースナノファイバー(CNF)は得られる。CNFは,高強度・高弾性,低熱膨張,分散液の特異な粘度特性などの興味深い特徴を有し,広範な用途に応用可能な次世代素材として注目を集めている。特にミクロフィブリル単位の細さで高アスペクト比のCNFは,セルロースにカルボキシル基やリン酸基等のアニオン性基を導入し,その静電反発と浸透圧効果により軽微な機械解繊で得られることが知られている。

当社ではパルプからセロファンを製造しているが,その製造工程の中間生成物であるセルロースザンテートも,アニオン性基を有するセルロース誘導体であることに着目した。セルロースザンテートを解繊時に溶解させないことがポイントで,マーセル化時にセルロースI型の結晶構造を保持させ,かつザンテート基の置換度を制御することにより,ザンテート化セルロースナノファイバー(XCNF)が効率的に得られることが分かった。また,XCNFのザンテート基は簡単な処理で脱離させ,無置換のセルロースナノファイバー(RCNF)に再生することも可能である。ある程度の凝集は観られるが,幅数nmのXCNFから再生して得られるRCNFの繊維径も数nmであり,非化学修飾のCNFとしては極めて細く透明性も高い。また,セルロースであることから原料パルプに近い耐熱性を有しており,これらの特徴を活かした応用開発を進めている。

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© 2020 紙パルプ技術協会
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