紙パ技協誌
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製紙技術特集 I
長網ウエットエンドの運転と最適化への新しい取組み(第2報)
─国内初号機“iTABLETM”運転結果と次なる展開へ─
Harry Ritter岩田 弘
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2020 年 74 巻 9 号 p. 861-867

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抄録

世界的規模で抄紙機の淘汰や転抄など中・小型抄紙機の活用が見直され,転抄改造と共に長網抄紙機やオントップフォーマ長網部での繊維分散性能向上による強度発現や印刷適性の改善に加え,脱水能力増強や広い坪量範囲の最適化運転など機能向上改造が盛んに行われている。国内製紙業界に於いても同様なトレンドにあり,同業他社に対するコスト競争,品質競争が従来にも増して熾烈を極めており,かってないチャレンジが求められている。

“IBS”社ではこれらの要求に答える為,長網テーブル上での脱水と繊維分散性能を個別に制御,DCS/タッチパネルから各坪量・抄速に合わせテーブル上のアクティビティを調整すると共に,真空システムの高機能化と簡素化で省エネを同時に達成した“iTABLE™”を開発,2008年から上市しすでに世界中で150台以上稼働させている。

本システムは,地合向上に留まらず薬品使用量・リファイニングエネルギ低減などの直接操業コストに影響するものから,強度特性が約5~20%向上する等多岐の効果が報告され,かつ投資回収も約1年以内と製紙会社から報告を受けている。

2018年に国内初号機が二層抄きの段原紙マシンに導入され,薄物・厚物とも地合が25%良化し紙力増強剤も最大10%削減されている。一方脱水能力については,厚物では20%の増速を達成する等生産能力が増加,操業性も大幅に向上し導入効果に満足しているとの評価を頂き,真空クローズド制御システムへのアップグレードも予定されている。

本稿では,国内初号機の稼働状況について報告すると共に,世界では次なるステージに展開がなされている状況についても紹介する。

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