紙パ技協誌
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研究報文
ペーパースラッジ懸濁液中のpHモニタリング下での塩酸処理によるCaCO3の効率的除去
柴田 葵介江川 美千子久保田 岳志小俣 光司宮崎 英敏
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2022 年 76 巻 12 号 p. 1100-1104

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抄録

本研究ではPS中のCaCO3に対してpHモニタリングを行いながら,最適な量での塩酸処理によるCaCO3の除去の実現化を目的とした。
CaCO3粉末と塩酸の反応を調査するために,市販のCaCO3粉末で調整した懸濁液と塩酸を反応させた。反応の結果,懸濁液中のCaCO3粉末は,塩酸との反応に約10分必要であった。また,CaCO3粉末は,pH 2以下となるまで塩酸を加えることで,ほぼ除去できることがわかった。
この結果を用いて,pHモニタリングによるペーパースラッジ中(PS)のCaCO3を塩酸で効率的に除去することを試みた。PSを塩酸処理後に焼成した試料について,粉末X線回折(XRD)および蛍光X線元素分析法(XRF)を行ったところ PS中のCaCO3はほぼ除去され,処理溶液からは除去されたCaCO3がCaCl2・2H2Oとして高純度で回収された。PSの塩酸処理前後の試料の走査型電子顕微鏡(SEM)より,PS中の紙由来の繊維は,pH 2での塩酸処理ではほとんど溶解しなかった。また,PS中に有機物由来の繊維が残ることでPSの燃焼およびPSが一部自燃した。以上から,PS中のCaCO3除去処理において,懸濁液のpHモニタリングにより,PS中のCaCO3に対する塩酸滴下量の最適化を実現した。

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