紙パ技協誌
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CNF・家庭紙・機能紙特集
セルロースナノファイバーを活用した新規農業資材
林 優衣
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2024 年 78 巻 2 号 p. 112-115

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抄録

安定した食料生産と持続性の両立のため,植物病害による農作物の損失を抑制でき,かつ環境負荷の小さい資材の開発が必要とされている。植物由来の新素材であるセルロースナノファイバー(CNF)は幅100 nm以下,アスペクト比100以上の極微細な繊維である。当社では,水中対向衝突法にて製造したCNF(ACC-CNF)を用いた新規農業資材:nanoforest-S【アグリ】を開発した。本資材はセルロース繊維と水のみから成り,極微細な繊維の膜で葉表面を物理的に保護するという新しいコンセプトの農業資材である。nanoforest-S【アグリ】は殺菌・殺虫成分を含まず,ACC-CNFの特徴である両親媒性を利用し,「マスク効果」・「カモフラージュ効果」の2つのユニークな効果によって病原菌の侵入を物理的に抑制する。本資材は大部分の植物病害の原因となる糸状菌(カビ)と細菌の両方の侵入抑制に効果があることが学術的にも示されている。また,物理的保護資材であるため,耐性菌が発生しない,作業者や環境に優しいという特徴がある。本資材は農林水産省の「みどりの食料システム戦略」でも推奨されている総合防除(IPM)の「物理的防除」に対応する資材である。ラボレベルでの検証のほか,生産現場での検証も行っており,当社CNF第一期商業プラントのある九州地方の生産者様にご協力をいただき実施した試験でも,良好な結果が得られている。今後も圃場試験及び研究開発を重ね,本資材を活用した農業への貢献を目指していく。

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