紙パ技協誌
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リグニン分解酵素系によるクラフトパルプの漂白 (第3報)
リグニンペルオキシダーゼあるいはキシラナーゼとマンガンペルオキシダーゼの併用処理について
原園 幸一近藤 隆一郎坂井 克己土川 圭一
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1996 年 50 巻 9 号 p. 1292-1298

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抄録

環境問題を考慮し, 塩素系薬品を使用せずに種々の酵素を利用した広葉樹未晒クラフトパルプ (UKP) の漂白を検討した。酵素としてはリグニン分解酵素であるマンガンペルオキシダーゼ (MnP) とリグニンペルオキシダーゼ (Lip) 及びキシラナーゼを使用した。
MnPはフェノール性リグニンモデル化合物しか酸化できないが, Lipは非フェノール性リグニンモデル化合物も酸化できる。そこで Phanerochaete chrysosporium の部分精製LiPを用いてH2O2を連続的に添加しながらUKPの処理を行ったところ, コントロールに比べベラトリルアルコールを併用することにより約5ポイントの白色度の上昇が観察されたが, 漂白性はPhanerochte szrdida YK-624 株のMnPによる処理より劣っていた。さらにLipとMnPを併用したパルプ漂白を検討したが, 両酵素による相乗効果は見られず, 同じような脱リグニンの挙動を示していることが推測された。キシラナーゼなどの糖加水分解酵素を漂白工程の前処理として利用すると, 脱リグニンの向上に効果的であることが報告されている。そこで, 広葉樹酸素漂白クラフトパルプ (O) をまずキシラナーゼ処理 (X) し, 次いでアルカリ抽出 (E), MnP処理 (M), H2O2漂白 (P) を順次行う非塩素系漂白プロセスを検討した。OXEMPシークエンスにより白色度は83%に達し, パルプ強度は塩素系薬品を用いて漂白したOCEDパルプとほぼ同等であった。

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