紙パ技協誌
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晒フィルターにおける電気防蝕の活用
窪田 吉晴
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1998 年 52 巻 1 号 p. 99-103,018

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抄録

昭和58年に稼働した紀州工場のKP漂白設備は, SUS317L等の高級ステンレス鋼を主に使用しており, 操業中に腐蝕によるパット破損等のトラブルが頻発した。そこで当時数例の実績があった電気防蝕システムの導入検討を行った。導入検討では, まずテスト設備に工程のパルプスラリーを流して防蝕立証テストを行い, 良好な結果が得られるかどうかの評価を行った。その結果, 適切な電位を与えれば十分な防蝕効果が得られることがわかり, 本設備の導入を決定した。
本設備の導入後, 最重要項目である設定電位の決定を行った。電位決定はモニタリングキットをフィルターシリンダーに取り付けて, その腐蝕状況をチェックしながら設定電位を微調整していった。それにより各漂白段での最適電位が決定された。また, モニタリングキットは防蝕装置稼働による防蝕効果を把握するためにも用いられ, 設定電位決定後も引き続きモニタリングを行い, 装置性能を評価する防蝕比率を求めた。その結果防蝕比率は塩素段で3.2, 二酸化塩素段で2.5であった。
このように十分な効果の得られる防蝕装置であるが, 運転に関してはほとんどノートラブルに近く, 11年間に5件の故障トラブルを経験しただけである。またフィルター本体をチタンで製作した場合とのコスト比較でも本設備が有利であることがわかった。
この電気防蝕設備は現在も順調に稼働中で, 当工場パルプ化工程の重要設備となっている。

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