抄録
過酸化水素は, パルプ漂白工程において汚染が懸念される有機塩素化合物を全く生成しないため, 紙パルプ産業では需要が大きく重要な薬品の一つである。そこで筆者らは, 過酸化水素をオンサイトで簡便に製造する装置, 即ち, 陰極酸素還元法による過酸化水素製造電解槽の開発を検討した。本研究では, 実用化上検討すべき課題である工業的な原料の使用および連続運転等について, 試作した電解槽を用いて検討した。
連続運転中に電流効率を安定化するには, 陰極への定期的な乾燥酸素の吹き込みが有効であることを見出した。この結果, 電流密度600A/m2において, 600時間に渡る連続運転により平均電流効率84.5%の電解性能を得ることができた。
陰極へ供給される酸素源としてPSA酸素が望ましいことが見出された。さらに電解液のアルカリ源として工業用液体苛性ソーダを用いた場合, 連続運転によって, 陽極電解液中に含まれる水酸化カルシウムがイオン交換膜内に析出し, 膜劣化が生じた。この問題を解決するために, 電解液中にEDTAを添加したところ, 電流効率は85.3%から94.4%へ向上し, さらに600時間に及ぶ連続運転においてもイオン交換膜は正常に使用可能であった。
以上の検討により, オンサイト型の過酸化水素製造装置を実用化する可能性が見出された。