紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
顔料塗工紙のピッキング現象の解析 (第2報)
ラテックスとデンプンの強度発現機構の相違点につい
西岡 利恭
著者情報
ジャーナル フリー

2001 年 55 巻 9 号 p. 1213-1222,027

詳細
抄録

塗工紙用の塗料に顔料接着剤として常用されるデンプンとラテックスについて、ドライピック発現機構の相違を明らかにするため, 基礎的検討を行った。バインダーとしてデンプンのみを用いたモデル塗料とラテックスのみを用いたモデル塗料を作製し, 塗工後の乾燥条件やカレンダー処理条件によってドライビック強度がどう変化するかを調べた。
塗工紙作製条件によるドライピック強度の変化を理解するために, 乾燥初期のバインダーマイグレーションによって変化する巨視的バインダー効率β とその後の乾燥負荷やカレンダー処理によって変化する微視的バインダー効率aの概念を導入した。
デンプンのみを用いた塗料の場合, バインダーマイグレーションによる巨視的バインダー効率βの変化でドライピック強度も大きく変化したが, 微視的バインダー効率αが変化しないため乾燥負荷やカレンダー処理条件が大きく変化してもドライピック強度は殆ど変化しなかった。
一方, ラテックスのみを用いた塗料の場合, 乾燥条件を変えても巨視的バインダー効率β と微視的バインダー効率αは殆ど変化せず, 安定したドライピック強度を示した。
一般的なデンプンとラテックスの併用系塗料では, マイグレーションによってドライピック強度が変化した場合はデンプンが, カレンダー処理条件によりドライピック強度が変化した場合はラテックスがそれぞれ関与していると考えられ, ラテックスとデンプンの強度発現機構についての基本的な相違点が明らかになった。

著者関連情報
© 紙パルプ技術協会
次の記事
feedback
Top