紙パ技協誌
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環境報告書用紙のライフサイクル・アセスメント
中澤 克仁山田 耕平桂 徹庭田 博章片山 恵一安井 至
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2003 年 57 巻 10 号 p. 1537-1549,024

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抄録

近年, 数多くの企業が環境報告書を発行するようになり, 環境的配慮から, 白色度が低く, 古紙配合率の高い再生紙を使用したものが多くなっている。本研究では, 各企業の環境報告書を入手し, そこで使用されている用紙の仕様を調査した上で, LCA (ライフサイクル・アセスメント) 手法により, 各種用紙の環境負荷分析および環境影響評価を試みた。
8企業の環境報告書用紙を調査した結果, 7企業でDIP100%の用紙が使用されており, 3企業が塗工紙の環境報告書用紙を採用していた。塗工紙と非塗工紙におけるCO2排出量について比較した場合, 塗工紙の乾燥エネルギーに起因するCO2排出量は少ないが, ラテックス等の塗工薬品の製造に係わるCO2排出量が多く, 総CO2排出量も非塗工紙より大きくなることが確認された。また, 5種類の環境報告書用紙についてLCI分析を行い, DIP100%配合した用紙は総エネルギー消費量としては小さいが, 化石燃料起源のCO2排出量については木材パルプを配合した用紙よりも多くなることが認められた。さらに, 3種類のインパクト手法を用いた5種類の環境報告書用紙におけるLCIA結果では, EPS2000法とパネル法における各種用紙による環境影響の差は比較的小さかったが, Eco-lndicator 99法では木材バルブを配合した用紙の環境影響が大きくなることが示された。
今後は, 持続可能な森林管理下での土地利用への影響や, 再生可能資源としてのバイオマスエネルギーの利用を考慮したLCAについて検討していく必要がある。

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