抄録
スギは国内に豊富に存在する樹種であり, 建築材や家具等, 様々な用途に利用されているが, パルプ原料とした場合, リグニンや樹脂成分を多量に含み, 容積重が低いことからKP原料としては適していないとされている。しかし, 容積重が低いというスギの特徴はKP原料ではなく, 機械パルプの原料として適性があると考えられたことから, 本研究では実験室スケールでスギを原料としたTMP製造技術について検討を行った。
ラジアータパインに対するスギの配合率を種々変更した原料チップからCTMP法を用いて機械パルプを調製し, パルプ物性の評価を行った。その結果, スギ配合率の増加に伴って, パルプの比散乱係数が増加した。各パルプにおけるファインの性質について調査を行ったところ, スギ配合率が増加するにつれて, 光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することが明らかとなった。従って, スギを配合することにより比散乱係数が増加したのは, 生成するファインの性質が変化したためであると推定される。
また, 過酸化水素を用いた漂白実験において, スギを20%配合した場合は, 配合しないものに比べて到達白色度が約3ポイント高いという結果が得られた。
以上の結果から, スギを原料として製造した機械パルプは, 光学的性質に寄与するフレーク状ファインが多く生成することから比散乱係数が高く, 紙の不透明度向上に対して有望な原料であると考えられる。さらに, 今回評価を行ったスギCTMPは白色度が高く, 漂白性にも優れていることがわかった。