2008 年 27 巻 4 号 p. 161-168
ヒト多中心性骨肉腫(Human multicentric osteosarcoma:HMOS)はまれな骨肉腫の変異体であり、効果的な治療法は確立されていない。今回我々は、多中心骨肉種患者の肺転移前の先行病変(左上腕骨)と肺転移後の後発病変(胸骨)から腫瘍細胞の細胞株を樹立した。そこでこの樹立した細胞株と手術時に切除された先行病変(左上腕骨)、および臨床的に胸骨病変とほぼ同時期に出現した後発病変(左腸骨)の組織標本を用いて、近年、さまざまな悪性腫瘍の転移や播種に中心的な役割を担い、骨転移に関与する事が報告されているケモカイン CXCR4/CXCL12 の免疫染色を行った。左上腕骨と左腸骨の CXCR4 の発現を比較したところ、後発病変で発現の増強がみとめられた。一方、細胞株では両者ともに CXCR4,CXCL12 の発現をみとめ、特に後発病変由来の細胞株では発現の増強がみられた。以上の結果から CXCR4/CXCL12 axis が転移の過程における HMOS の病態に関与している要因の1つではないかと考えた。