抄録
ペプチド性細胞成長因子である酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF:Acidic Fibroblast Growth Factor)は心臓組織に多量に存在することが知られている。しかし、心臓におけるaFGFの生理的役割や病態との関連性につては十分に解明されていない。本研究では、aFGFに対する特異抗体を用いた免疫組織化学的手法により、冠状動脈を結紮して心筋梗塞を誘起した心臓におけるaFGFの局在を光学及び電子顕微鏡により調べた。 梗塞手術後48時間では、aFGFは虚血部分に多く存在していた。特に、虚血状態にある心臓の血管内皮細胞と心筋原線維には、多量のaFGFの存在が認められた。正常な心筋組織や壊死した組織では、aFGFの存在はほとんど観察されなかった。これらの結果から、aFGFは毛細血管の新生、そして虚血部分の心筋組織の修復と機能改善に役立っていると推察される。