抄録
逆転写酵素はレトロウィルスがもつ特徴的な酵素であり、培養細胞がレトロウィルスに感染しているか否かを判定する上で有用な指標になる。ここでは、培養細胞の上清中の逆転写酵素活性を簡便に検出する方法について紹介する。逆転写酵素反応の鋳型は、pBR322プラスミドのテトラサイクリン耐性遺伝子内の370塩基に相補するRNAを用い、逆転写酵素によって合成されるDNAは2段階polymerase chain reaction(PCR)により検出する。ヒト1型免疫不全ウィルスから調製した逆転写酵素を用いたときの本法の検出感度は、20μlの検査試料中、逆転写酵素活性で10-7-10-8単位を示す。本検出法で、ヒトT細胞白血病ウィルス、モロニーマウス白血病ウィルス、モロニーマウス肉腫ウィルスまたはラウス肉腫ウィルスに感染した細胞株の未濃縮培養上清から逆転写酵素活性が検出できる。本検出法はラジオアイソトープを使用する必要がなく、10時間以内で結果が得られることから、培養細胞に感染した各種レトロウィルスの検出法として有用である。