抄録
本研究では、幅広い分野の留学生に対する論文読解・作成支援に必要な情報を得るために、人文科学・社会科学・工学各90編、計270編の日本語原著論文を対象に、「導入部分」に典型的に出現するとされる構成要素の分析を行った。すなわち、「a)研究の対象と背景の説明、b)先行研究の提示・検討、c)研究目的・研究行動の提示」という構成要素の現れ方を比較し、これらの「導入的要素」の分野間の異同について分析した。その結果、共通点としてa→b→cという典型的な展開の型が確認された一方で、分野や雑誌による展開の違いが明らかになった。また、冒頭章以降の章でcが再帰する「課題設定再帰型」のパターンが観察された。これらの結果から、学習者への論文読解・作成指導に関して提言を行った。