専門日本語教育研究
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報告
法学講師と日本語講師の連携の振り返り
SCAT分析から見えてきたこと
宮島 良子レイン 幸代金村 マミ
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2021 年 23 巻 p. 35-42

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抄録
 本稿は、法学講師1名と日本語講師1名が連携した、日本語による意見文作成のための授業の実践に対する振り返りを質的データ分析手法SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析した結果の報告である。日本語で「書く」作業を通して法学日本語を学ぶカンボジア人学生の「法的リテラシー」を育成しようという共通認識のもと、法学講師と日本語講師が連携し、日本語による意見文作成のための授業実践が行なわれた。そして、両講師に対して実践を振り返る半構造化インタビューを行ない、そこで得られた言語記録をテクスト化し、分析した。その結果、授業実践に関する話し合いを通して、法学講師が法学的な思考プロセスに沿った反駁を重視していること、日本語講師にとってそれは新しい気づきであったこと、法学講師は法学的な思考プロセスというものを学生が自律的に学びとるものであると考えていたが、学生に対して法学的な思考プロセスや反駁の方法を例示する必要性などを認識したことが確認された。また、異分野の講師と話し合いをすることは相互に自分野を分析的に捉え直す契機となっていることなどが見えてきた。一方、教授内容を考える際には双方が法学未修者への配慮や、日本とは異なる環境で学んでいる学生であることを意識しているものの、教授方法に関しては意識に差が認められた。
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