抄録
労働力不足解消のために日本に招かれ、製造業で単純労働に従事した南米日系人労働者は、来日当初、日本語能力はゼロまたはほぼゼロの状態であり、また、仕事も日本語を必要としないものであった。しかし、彼らの中には、その後、高度な日本語能力が求められる介護士注1に転職し、就労定着していった者がいる。本研究では、そうした南米日系人労働者がどのようにして介護士に就労定着していったのかの解明をM-GTAを援用して試みた。その結果、【日本定住・永住の決意】と【非正規雇用の単純労働】の経験が【介護士としての就労】に影響を与え、様々な人との関わり合いによって介護士としての能力を獲得しつつ、離職の危機を上手く乗り越えて行くというプロセスが浮上した。また、そのプロセスでは【日本語の習得】と【介護士としての就労】に相乗効果も見られた。しかし、彼らの主な【日本語の習得】手段が『聞こえた日本語をメモして丸暗記』して話すものであるため、『日本語の読み書きの問題・課題』があり、就労定着はできても、キャリアアップができない状態にあることもわかった。