抄録
本稿は、ベトナムの大学におけるビジネス日本語授業を、日越関係の進展とアクティブラーニング推進の動きを踏まえ、実践力育成のための活動型授業への転換を目的とした教師研修の報告である。本研修は、日本側研修講師2名とベトナムA大学の日本人研修企画担当者との協働による長期3段階で実施した継続的な研修である。これまで教師主導型の知識詰め込み教育を行ってきた教師たちは、ビジネス経験を持たず、日本文化に精通していないことから、ビジネス日本語授業の担当に不安を抱える傾向にあった。そこで、本研修では実践力育成をねらいとする活動型のビジネス日本語授業に向けての研修を企画・実施した。第1段階の対面での研修ワークショップでは、活動型ビジネス日本語教育を支える協働の理念についての講義、複数の活動体験、授業実習等を行った。第2研修ではオンラインにより講師が当該大学の学生を対象に行った授業をベトナム側教師が見学し、授業運営や日本語のフィードバックの仕方等を学んだ。その後、A大学では改革が進められたが、そこに新たな困難を感じ不安を抱える教師もあった。そこで、翌年、ビジネスライティング等を内容とする第3研修をオンラインにより実施した。各研修の満足度は高かったものの、教師間の協働や、学びを学生とともに創り上げる視点の不足等、活動型ビジネス日本語教育を行う上での課題も見えてきた。