抄録
Kshara Sutraはアーユルヴェーダで痔瘻の治療に用いられる手術糸である。本研究では, Kshara Sutraによる施術を広く日本に導入するため, 日本に生育する植物を使って国産Kshara Sutraの作製を試みた。Kshara Sutraを作製するにあたっては3種類の薬剤が必要である。その一種Snuhi (トウダイグサ科のEuphorbia antiquorum L. またはEuphorbia neliifolia L.) は患部の肉芽形成を促進させ, 糸に薬剤を付着させる役割を担うとされる。しかし, Snuhiは熱帯性の植物で日本に自生せず, 野外での栽培も困難である。そこで, Snuhiの代わりにクワ科のイチジク (Ficus carica L.) の未熟果実から得た乳液とトウガラシチンキ剤を用いてKshara Sutraを作製した。なお, その他の材料として, 我が国に自生するヒナタイノコヅチの全草から製したKshara, 市販のウコン末, および高吸水性糸を使用した。これは我が国初の国産Kshara Sutraであり, 「金沢糸1号」と名付けた。その臨床については現在進行中である。