抄録
男性不妊症の中でも病因が不明である特発性造精機能障害患者における補中益気湯投与前後での一般精液所見および精漿中サイトカイン (TNF-α, IL-6, RANTES) の濃度変化を検討した。 1999年 6 月から2004年 3 月までに不妊を主訴として当科を受診し, 精液検査にて精子濃度 1cc あたり 2 千万未満, あるいは精子運動率 50% 未満であり, 病歴, 理学的所見, 経直腸的超音波検査及びホルモン検査などで特発性男性不妊症と診断された20例を対象とした。 補中益気湯投与前後の一般精液検査, 精漿中 TNF-α, IL-6 および RANTESの濃度を ELISA 法にて測定した。 一般精液検査において補中益気湯投与前後で精液量, 精子濃度, 正常形態率は有意な改善を見なかったが運動率は有意 (p=0.002) に改善していた。 補中益気湯投与前後で TNF-α, IL-6 は低下傾向を示したが有意ではなかった。 一方, RANTES は有意に (p=0.024) 減少していた。 補中益気湯は特発性男性不妊症における精子運動性改善に有用であると思われ, また, RANTES の精漿内における濃度に影響を及ぼしている可能性が示唆された。