抄録
現在の多様化社会において職業は細分化・高度化の変化の度合を速めている. このような状況は, 産業医学の専門家が職業全般にわたる職業知識を持つことを不可能に近くしている. 職業を体系的に研究する「職業学」という学問を提唱したのは, かの夏目漱石であったが, 今再び産業医学という立場でこの提唱を検討する意義が生じている. また, 国際疾病分類(ICD分類)が医学研究にもたらした効用を考えれば, 産業医学の分野で標準的な職業分類を共通認識として利用することも検討の余地がある. ただ, 膨大かつ詳細な職業分類を利用することに対して我々はあまり馴染みがないために, 個々の職業に対してaccessibilityの困難な事態に直面している. このような観点から, 我々は職業同定・職歴聴取を行う問診場面を想定し, 職業知識に関して, 産業医学の専門家を支援するコンピューターシステムの開発に着手した.